心理的安全性とは何か
チーム内で、ごく基本的な質問をしようとしたとき「そんなこともわかっていないのか」とあきれられることへの不安を覚えたことはありませんか?このチームなら否定されないと信じ合える関係=「心理的安全性」を建設業での実践方法と合わせてご紹介します。
心理的安全性の歴史
心理的安全性は、「 Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」(心理的安全性とワークチームにおける学習行動)といい、Amy Edmondson(エドモンソン教授)という論文に初めて登場したのが1999年になります。
世界的に、心理的安全性が有名になったのは、Googleが行った社内調査に於いて、仕事の出来るグループと出来ないグループの差は、「心理的安全性」にあるとの報告が大きな契機となりました。
この概念をエドモンソン教授は「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と定義しています。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
自分の思ったことをためらわずに口に出せる、もし、その内容が少し的外れな場合でも、周りのチームメイトは聞いてあげます。決して茶化したりしないで、そして、リーダーや先輩がおかしな部分について話を聞きながら、修正してあげます。そのようなチームでの関係性が保たれるとき、心理的安全性があるチーム・グループと言えます。
チームメンバーに対してリスクのある行動を取ることは、特別難しいことではないと思われるかもしれません。しかし、「この作業の目標は何ですか?」などのように、ごく基本的な質問をするときのことを想像してみてください。「そんなこともわかっていないのか」とあきれられることへの不安を覚えるのではないでしょうか。無知だと思われないように、質問をせずにやり過ごそうとする人も少なくないはずです。このように、こんなこと聞いて怒られるのではという考えが頭を横切らない、どんな質問でもこのチームでは受け入れられるそのようなチームには「心理的安全性」があると言えます。もっとも、基本・基礎・土台になる考え方です。
心理的安全性のレベル
エドモンソン教授は、チームにおける心理的安全性がどの程度のレベルであるかを、次の文について自分自身はどのように当てはまるかを確認することで理解できると話しています。
チームにおける心理的安全性レベルチェック
チームの中でミスをすると、
たいてい非難される。
チームのメンバーは、自分と異なるという
ことを理由に他者を拒絶することがある。
チームの他のメンバーに
助けを求めることは難しい。
※以下の項目から回答基準が逆になっています。
チームのメンバーは、
課題や難しい問題を指摘し合える。
チームに対して
リスクのある行動をしても安全である。
チームメンバーは誰も、自分の仕事を
意図的におとしめるような行動をしない。
チームメンバーと仕事をするとき、
自分のスキルと才能が尊重され、
活かされていると感じる。
レベルの目安
- 35点以上心理的安全性が高いチームだと思われます。
- 25点以上特に低い項目を改善して、より良いチームを目指しましょう。
- 15点以上あまり良い状態ではないと思われます。以下の対策をご参照ください。
なぜ心理的安全性が必要なのか
仕事は、自由業で単独で仕事をしている人以外は、チームで作業を行います。下の図は、Googleが示した効果的なチームの在り方です。そのもっとも基礎となるものが心理的安全性になります。
効果的なチームには、心理的安全性が確保されているからこそ成り立つものになります。巨大企業であるGoogleが社内で行った大規模調査であり、中小企業には当てはまらない、と思われるかもしれませんがそんなことはありません。この考え方は全ての企業の事業所の現場の原点になります。
1.サイコロジカル・セーフティー(心理的安全性)
チームメンバーがリスクを取ることを安全だと感じ、お互いに対して弱い部分もさらけ出すことができる。
2.相互信頼
チームメンバーが他のメンバーが仕事を高いクオリティで時間内に仕上げてくれると感じている。
3.構造と明確さ
チームの役割、計画、目標が明確になっている。
4.仕事の意味
チームメンバーは仕事が自分にとって意味があると感じている。
5.インパクト
チームメンバーは自分の仕事について、意義があり良い変化を生むものだと思っている。
チームの効果性に影響を及ぼすその他の因子
相互信頼
相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げますこれに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁します。チーム内での信頼関係が作業の質、安全、早さに関係します。信頼関係が築かれていないと作業間のつながりがなく、仕事が遅く、不安全行動にも見ないふり等危険にもなります。
構造と明確さ
効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス(仕事の流れ)、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。目標は、個人レベルで設定することもグループレベルで設定することもできますが、具体的で取り組みがいがあり、なおかつ達成可能な内容でなければなりません。
作業の流れを理解していないと、次への準備が出来ずぎこちなくなり、安全面にも不安材料となります。
仕事の意味
チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。
やらされて行う仕事ではなく、自分で行う仕事の内容を理解し自分の役割を自分で把握していることが重要になります。
インパクト
自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。
このインパクトがとっても重要になります。自分の行っている仕事が役に立っていることが分かること、その仕事に自分が必要とされている。そのように感じられることが大切です。