建設業の安全対策とは?

建設業の特徴と労働災害の関連性

労働災害の発生率が高い傾向にある建設業。
ここでは、そもそも建設業には、他の産業と比べてどのような特徴があり、それらがどう労働災害へと結ぶつくのかをご紹介します。また、建設業の安全と大きく関わりのある法律「労働安全衛生法」をわかりやすく解説していきます。

建設業の特徴

建設業は他の産業と比べて、大きな違いがありそれが特徴となっています。

①受注産業であること
②単品産業であること
③移動産業であること
④屋外産業であること
⑤重層下請産業であること

です。このような特徴を持った建設業では、製造業などの同じところで同じものを長期間製造する産業と比べて労働災害の発生率が高くなっています。

建設業の特徴

労働災害の関連性

建設業の5つの特徴が労働災害に及ぼす影響は大きいと考えられます。ここでは5つの特徴が及ぼす労働災害への影響について見ていきます。

①受注産業

製造業のように見込み生産ではありません。公共工事では入札を経て工事に着手します。

影響
それぞれ、建設会社は計画的に受注を目指していますが、なかなかそういうわけには行きません。受注が多い時少ない時が出ます。多い時は作業員不足になり無理な工程から不安全行動を引き起こし災害へと結びつきます。

②単品産業

建設工事では、橋、ダム、道路、ビルなど多種多様で、同じものが少なくこのため計画生産に向かず、大量生産が出来ません。

影響
各建設現場が、一つの会社のような構造で成り立っているため、その仕事に集められた作業員での作業となり、コミュニケーションを取ることから始める必要があります。

③移動産業

建設工事では、他の産業と大きく異なり生産場所が現場ごとに移動します。このため生産設備を固定することが出来ず、使用する機械・設備だけでなく作業員も移動することが必要です。

影響
設ける設備も仮設設備と言われるように、仮に設置するものであり、変更・追加も多くあります。また、作業員も建設現場を転々とするため、新しい現場に慣れるまでに事故に遭う可能性が高く、コミュニケーションも現場ごとで取る必要性に迫られます。

④屋外作業

屋外生産が基本であるため、自然条件が絡む災害が常に付きまといます。暑さ、寒さの厳しい時期には、作業性が極端に下がるなど安全面のみならず、品質、工程面にも影響を与えています。

影響
建設業では、行う作業の多くを屋外で行うことになり、自然の影響を直接受けることになります。このため、風、雨、雪、気温などの自然条件に作業が大きく左右され影響を受けます。

⑤重層下請け産業

建設業の現場は一つに会社のようなものであり、多種多様な資機材・多工種に及ぶ作業員を管理運営しなければなりません。このため、元請は多くの協力会社を管理し運営をおこなう必要に迫られます。また、受注産業であるため多くの作業員を抱える事が出来ないため、協力会社は重層構造が常態化しています。

影響
大きな建設現場では、多数の会社が混在して作業を行うため、統括管理が採られているが、連絡調整が不十分での災害が多く見受けらます。協力会社が重層構造になっているため作業員への指示や指導が徹底しずらいためです。また、小規模会社や一人親方も多く、事業主および作業員での安全意識のずれが大きく、安全教育が全員に浸透しているとは言えません。

作業実態と労働災害

工事現場では数多くの職種の作業員が混在して作業し、しかも、その作業員も日常的に入れ替わっている状況下での施工となります。
職長は、そのような混在作業の実態をシッカリとみつめ、作業員の高齢化や高所作業が多い作業などの実態をつかみ、それに応じた安全施策を進めていく必要があります。

死亡災害の2割は、新規入場初日に発生

新規に入場した作業員には、所属会社が実施する「送り出し教育」と元請が実施する「新規入場者教育」を受けているが、「送り出し教育」が行う作業に合致しているのでしょうか?「新規入場者教育」が充分に時間を取って現場の危険個所がキッチリ伝えられているのか等問題も多く、現場の状況を十分につかめないまま作業に取り掛かり、被災していることが多いのです。

60歳以上の高齢者の被災率は30代と比べ1.9倍

高齢者は、身体機能が大幅に低下するため、転倒災害などが多くなる傾向にあります。高齢者災害の特徴を知り、配慮することで高齢者災害を少なくし、高齢者が安心して働ける現場作りが、人手不足を解消する方法にもつながります。
[1]高齢者災害の特徴
高齢者は墜落・転落、転倒、はさまれ、巻き込まれ災害の順で発生していますが、災害の事例をみるといずれもが、身体的機能低下が大きな影響を与えています。

職長が特に配慮すべき事項

若い職長が高齢作業員に特に注意し、適正配置に心がけるポイント
  • 高齢者の立場に立って、指示指導をすることが大切です。「自分は見えている、自分には聞こえている、自分は覚えている」ではダメです。高齢者の立場でものを判断することが必要です。
  • 高齢者の個人の能力を把握しましょう。
  • 高齢者の知識、経験、技能を活かすことを考えましょう。

労働安全衛生法

1972年に制定された法律「労働安全衛生法」の基本をわかりやすく解説していきます。

目的

労働安全衛生法第一条

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

解説
労働安全衛生法第1条は、この法律の目的を示しています。目的は「労働者の安全と健康の確保」「快適な職場の形成」になります。そのためには…
総合的・計画的な対策の推進
  • 危害防止基準の確率
  • 責任体制の明確化
  • 自主的活動の促進

ここで、覚えてほしい下記の条項があります。

事業者等の責務

労働安全衛生法第三条

第三条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
3 建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。

解説
労働安全衛生法第3条には、この法律が労働災害防止の為の最低基準だと謳っています。安衛法・安衛則に記されている事柄は安全衛生の最低基準であることを忘れないでください。3項には、発注者は受注者に対して安全衛生的な作業を妨げるような条件を付してはならないとあります。発注者が無理難題(工期の短縮)を受注者に対して求めてはならないと言う事です。ある発注者は受注後に工期短縮を求めたり、下部工の施工が遅れ上部工に現場着工が遅れたにも関わらず、工期の延期をしない場合は発注者に責任があります。
労働安全衛生法第四条

労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。

解説
事業者が労働災害防止の処置を行う場合、労働者はその措置に協力しなければなりません。労働者を守る法律ですが、労働者の協力も必須事項であると考えてください。