心理的安全性の高め方
心理的安全性を高めるには(Google:re:Work)
1.積極的な姿勢を示す
- 「今」を大切にし、目の前の会話に集中する。
- チームメンバーから学ぼうという意欲を持って質問をする。
- 自分の意見を述べる、対話的なコミュニケーションを心がける、傾聴の姿勢を示す。
- 積極的な姿勢を示すため、返答するときは言葉で返す(例: 「なるほど。詳しく説明してもらえますか?」)。
- 体の動きや仕草に注意する。話を聞くときは少し体を乗り出すようにするか、相手の方に顔を向ける。
- 会話の当事者として積極的に話を聞いていることを示すため、相手と目を合わせる。
2.理解していることを示す
- 互いの理解が一致していることを確認するため、相手の発言内容を要約する(例: 「今言ったことは・・・こういうことだよね?」)。その後で、同意できる点、できない点を示し、グループ内で率直に意見を交わす。
- 話の内容を理解したことを言葉で示す(例: 「なるほど」「よくわかります」)。
- 責めを負わせるような言い方(例: 「なんでそんあことをしたんだ?」)はせず、解決策に焦点を当てる(例: 「この作業をよりスムーズに進めるためにできることを考えまよう」「次に備えた行動計画を立てるため、皆で協力するぞ」)。
- 気づかぬうちに否定的な表情(苦い顔や不愉快そうな顔)を浮かべていないか注意する。
- 会話中や会議では、話を聞いていることを示すためにうなずく。
3.対人関係において相手を受け入れる姿勢を示す
- 自分の仕事の進め方や好みをチームメンバーに伝え、チームメンバーにも同じように自身のやり方を皆に伝えるよう促す。
- チームメンバーのために時間を割く、友好的な態度を示す(例: 1対1の定例外の会話、意見交換、キャリアに関するコーチングのための時間を作る)。
- 定期的な1対1の打ち合わせやチーム会議とは別に定例外の会議を開く場合は、会議の目的を明確に伝える。
- チームメンバーの貢献に対して感謝の意を示す(例:「ありがとう」)。
- チームメンバーが他のメンバーについて否定的な言葉を口にしたときは間に入る。
- 相手に対して開かれた姿勢を取る(チームメンバー全員に顔を向ける。誰かに背中を向けることはしない)。
- チームメンバーと親密な関係を築く(例: チームメンバーと仕事以外の話をする)。
4.意思決定において相手を受け入れる姿勢を示す
- チームメンバーに意見や同意を求める。
- 人の話を妨げない。妨げようとする人をたしなめる(例: 人の話を妨げようとする人がいたら間に入り、元の発言者に話を続けさせる)。
- 意思決定の背後にある根拠を説明する(対面またはメールで、その結論に達した経緯を詳しく説明する)。
- 他のチームメンバーの貢献を認める(例: チームメンバーが成功や意思決定に貢献した場合は、その事実に言及する)。
5.強情にならない範囲で自信や信念を持つ
- チーム ディスカッションをコントロールする(例: チーム会議での雑談を認めない、意見の対立が個人間の対立に発展しないようにする)。
- チームメンバー全員が聴き取れるよう明瞭に発声する。
- チームをサポートする、チームを代表して行動する(例: チームの成果を上級役員に伝える、チームメンバーの功績を認める)。
- 自分の意見に対して、チームメンバーが別の意見がある場合、反論したり異論を唱えるようチームメンバーに促す。
- 自分の弱みを見せる。仕事や失敗に関する自分の個人的な考え方をチームメンバーに伝える。
- インパクトを取るようチームメンバーに促し、自分の仕事でも実践してみせる。
建設業におけるチームとグループ
1.グループ(会社縦組織)
相互依存性が最小限という特徴があり、組織または管理上の階層関係に基づいています。グループのメンバーは、情報交換のために定期的に集まる場合があります。
2.チーム(現場横組織)
メンバーは相互に強く依存しながら、特定のプロジェクトを遂行するために、作業内容を計画し、問題を解決し、意思決定を下し、進捗状況を確認します。チームのメンバーは、作業を行うために互いを必要とします。
グループ(会社縦組織)における心理的安全性
心理的安全性のあるチームを作るには、心理的安全性のあるグループを作ることが必須条件になります。会社縦組織であるグループでは、会社として心理的安全性についての理解が必要になります。会社として心理的安全性に取り組むことが絶対条件です。
1.社長として行う事
会社としての方針として社是に「心理的安全性」を掲げてください。会社として全体で取り組む姿勢を社会に対してオープンにすることが重要です。
2.傾聴
傾聴とは相手の話したいことに対して深く丁寧に耳を傾け、相手に肯定的な関心を寄せ内容の真意をはっきりとさせながら、共感的理解を示すコミュニケーションの技法です。ただ話を聞いたり自分の関心のあることだけを質問したりするのではなく、相手が話したいことや伝えたいことを真摯に受け止め、共感的な態度で理解に務める聞き方を目指します。
傾聴により、話し手は自分だけではわからなかった自分自身について深く理解することができ、どのような行動をとるべきか気付くきっかけを与えることが期待できます。また、聞き手も相手への深い理解が円滑なコミュニケーションにつながり、傾聴は信頼関係の構築にも役立つテクニックです。
傾聴の実践
会社内では普段から傾聴に心掛けてください。傾聴とは、ただ受け身で話しを聞くわけではなく
- 相手をしっかりと理解したい
- 相手と良い関係を築きたい
という思いが具体的な形になった話の聞き方です。
傾聴では、基本的に話し手が話したいことを話したいように、感じたままに自由に話してもらいます。
それを聞き手が受け止めながら聴く事で、もっと話して良いんだなと感じてもらえたり、良い悪いといった評価をされない事で、素の自分を出しやすくなるメリットがあります。
相手に話をさせる事を重点に考えてください。まずは、話をさせるそれを聞くことです。なかなか考えがまとまらない場合は、助け船を出してあげてください。傾聴は、英語でいうとアクティブ・リスニングとも言われています。何も言わずに聴くのではなく、積極的に聴きます。ポイントはシンプルです。
- 受容的な態度(安心して話せる態度)で聞く
- 視線を合わせる
- 話し手が安心出来る声のトーンで関わる
- うなずきとあいづちを入れる
- 相手が言った言葉を繰り返す(オウム返し)
- 共感のことばを伝えながら聴く
- 効果的な質問をする
傾聴とは、ただ黙って聞くのではなく、相手の表情、視線、姿勢、声のトーン、言葉の内容、呼吸に意識を集中して聴くことです。
3.会議での心理的安全性
多くの会議では、発言者がいつも同じ人になっていませんか?部や課の全ての人が発言するような会議が開催出来ていますか?
「こんなこと聞いても良いのかなぁ」
「この件はこうすればいいけど、話しても聞いてくれるかな」などと
考えているため、ついつい発言できない社員がおられるのではないでしょうか。心理的安全性はある組織では、みんなが自由闊達に発言できる会議になります。
自由闊達な会議へ
1 会議の目的をはっきりさせる
- 何か行動を決めるための「意思決定」会議
- 提案、意見だしするための「議論」会議
- コミュニケーションをとるための「共有・確認」会議
基本的には、この3つのいずれかが会議を行う目的になります。
会議資料は、事前に配布し参加者には会議の目的を示し、どのような意見を求めるかを予め示し参加者に考える時間的余裕を与えてください。
2 会議
- 参加者全員の意見を聞くことを会議の趣旨としてください。
- 会議の最初にこの会議の目的と求めるゴールを示してください。
- 参加者の意見には、傾聴の行動を実施してください。
- 会議主催者(管理者)は、発表者を褒めてあげてください。
「よく考えたね」
「そういう考え方もあるんだ」
意見に対して決してけなす・しかる・無視することダメです。どのような意見も大切な意見と考えてください。
最初から、全員が意見をシッカリと言えることは無いかもしれません。発言した人に対して上司がしっかりと聞く、発言に対して褒められる、このような事を続けることで、会議の意味を理解し、自分から意見を出せるようになるまで、継続してください。
4.普段の心理的安全性
普段の業務から、管理職は部下の報告、意見を傾聴の心を持って聞いてください。そして、褒めるべき点はその場で褒めてあげてください。
心理的安全性のコミュニケーション
- 体の動きや仕草に注意する。話を聞くときは少し体を乗り出すようにするか、相手の方に顔を向ける。会話の当事者として積極的に話を聞いていることを示すため、相手と目を合わせる。
- 話の内容を理解したことを言葉で示す(例: 「なるほど」「よくわかる」)。
- 相手に対して開かれた姿勢を取る(チームメンバー全員に顔を向ける。誰かに背中を向けることはしない)。
- チームメンバーと親密な関係を築く(例: チームメンバーと仕事以外の話をする)。
※管理職は少し世話を焼く人になってください。部下がどのようなことに悩んでいるかを知る事も心理的安全性には重要になります。
建設業における実践
チーム(横組織)の心理的安全性
建設業において、グループとチームの違いは大変大きいと言わざるを得ません。通常では、部下横断的にプロジェクトチームを社内に組織することがありますが、建設業でのこのチーム(横組織)は協力会社社員との組織になり、チーム員とは初対面の場合もあり得ます。
建設業での作業員の特徴として、口下手な方が多いと私は感じています。そのような方々から自分の意見を話す環境作りを行うには、職長の能力に大きく依存します。
1.作業員の引き出しを開けさせる
現場作業員は、よほど経験の浅い作業員以外は、自分の考えをシッカリ持って作業を行っています。公共工事においては、月に1回安全教育訓練を受け、毎日朝礼では危険予知を実施し、作業の前には手順書の周知会が実施されています。そのような経験から、一人一人は口に出して話はしませんが、聞けば答える引き出しを多数持っています。その引き出しをまずは、職長が開けてあげるのです。それを繰り返すことで自分で引き出しを増やし、自分で開けられるようになります。
2.職長の役割
現場の心理的安全性には、職長の努力が大きく影響します。チームはグループと異なり他社の作業員との集団になります。担当する工事のために集められた集合体であり、。今までにあったことも無い人と仕事を進める事になることもあり、職長は自分のチームをまとめ、目標に向かって進めることになります。このような状態でこそ、チームの心理的安全性は作業全般、安全、工程に大きく影響を及ぼします。
職長は、自分のチームの心理的安全性を形成する役割を担います。
3.コミュニケーション
- チームメンバーとのコミュニケーションは職長から積極的にとりましょう。
- 仕事に対する経歴、個人的要素にはなりましが、プライベートにたいては、その人の人となりを理解するうえで重要になります。
- 話をするときは傾聴に注意し話しましょう。
4.具体的事例
1 作業手順書周知会
作業手順書は、実際に作業を行う会社が作成します(原則)。そして、実際の作業を始める前に作業手順の周知会を実施します。その周知会において作業手順内容を確認する際に、今までは手順書に沿っての読み合わせになっている場合が多いと思われます。ここに、各作業員への質問を入れ、理解度、安全性を確認し、理解している場合は褒めてあげてください。(当たり前の項目でも、出来ている場合は褒めてあげてください。)
- 例
- 高所作業では、親綱に安全帯フックを「安全帯よし」と声を出して掛ける。
ここで、重要なのは、自分の意見を言う事が少ない作業員に意見を出させ、褒められると言う事が大切です。必ず答えが出せる点を確認するようにして下さい。誰もが恥ずかしい場面でもあり、答えを導くような質問としてください。
2 朝礼時・昼礼時・夕礼時
現場によっては、朝礼・昼礼・夕礼が実施されています。それぞれ、行うことには違いがありますが、作業当日の作業内容・安全指示・危険予知を行います。多くの現場では、職長が話して作業員が確認する場合が多く、作業員から意見を聞く機会が少ないのが現状です。少し時間が取られますが、作業員の資質の向上、心理的安全性のあるチーム作りに格好の場です。
- 作業指示では、当日の作業項目を伝え、その作業内容については作業員に話させ、出来ていればその場で褒め言葉を入れてあげてください。
- 危険予知では、作業内容に潜む危険を考えさせ、その対策を話します。ここでも、褒めを入れる事が大切です。
最後に、心理的安全性は一朝一夕にはいきません。現場では職長が諦めずに、毎日コツコツと行うことになります。作業員から自発的に発言が出るようになるまで頑張ってください。
心理的安全性とは何か
チーム内で、ごく基本的な質問をしようとしたとき「そんなこともわかっていないのか」とあきれられることへの不安を覚えたことはありませんか?このチームなら否定されないと信じ合える関係=「心理的安全性」を建設業での実践方法と合わせてご紹介します。
心理的安全性の歴史
心理的安全性は、「 Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」(心理的安全性とワークチームにおける学習行動)といい、Amy Edmondson(エドモンソン教授)という論文に初めて登場したのが1999年になります。
世界的に、心理的安全性が有名になったのは、Googleが行った社内調査に於いて、仕事の出来るグループと出来ないグループの差は、「心理的安全性」にあるとの報告が大きな契機となりました。
この概念をエドモンソン教授は「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と定義しています。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
自分の思ったことをためらわずに口に出せる、もし、その内容が少し的外れな場合でも、周りのチームメイトは聞いてあげます。決して茶化したりしないで、そして、リーダーや先輩がおかしな部分について話を聞きながら、修正してあげます。そのようなチームでの関係性が保たれるとき、心理的安全性があるチーム・グループと言えます。
チームメンバーに対してリスクのある行動を取ることは、特別難しいことではないと思われるかもしれません。しかし、「この作業の目標は何ですか?」などのように、ごく基本的な質問をするときのことを想像してみてください。「そんなこともわかっていないのか」とあきれられることへの不安を覚えるのではないでしょうか。無知だと思われないように、質問をせずにやり過ごそうとする人も少なくないはずです。このように、こんなこと聞いて怒られるのではという考えが頭を横切らない、どんな質問でもこのチームでは受け入れられるそのようなチームには「心理的安全性」があると言えます。もっとも、基本・基礎・土台になる考え方です。
心理的安全性のレベル
エドモンソン教授は、チームにおける心理的安全性がどの程度のレベルであるかを、次の文について自分自身はどのように当てはまるかを確認することで理解できると話しています。
チームにおける心理的安全性レベルチェック
チームの中でミスをすると、
たいてい非難される。
チームのメンバーは、自分と異なるという
ことを理由に他者を拒絶することがある。
チームの他のメンバーに
助けを求めることは難しい。
※以下の項目から回答基準が逆になっています。
チームのメンバーは、
課題や難しい問題を指摘し合える。
チームに対して
リスクのある行動をしても安全である。
チームメンバーは誰も、自分の仕事を
意図的におとしめるような行動をしない。
チームメンバーと仕事をするとき、
自分のスキルと才能が尊重され、
活かされていると感じる。
レベルの目安
- 35点以上心理的安全性が高いチームだと思われます。
- 25点以上特に低い項目を改善して、より良いチームを目指しましょう。
- 15点以上あまり良い状態ではないと思われます。以下の対策をご参照ください。
なぜ心理的安全性が必要なのか
仕事は、自由業で単独で仕事をしている人以外は、チームで作業を行います。下の図は、Googleが示した効果的なチームの在り方です。そのもっとも基礎となるものが心理的安全性になります。
効果的なチームには、心理的安全性が確保されているからこそ成り立つものになります。巨大企業であるGoogleが社内で行った大規模調査であり、中小企業には当てはまらない、と思われるかもしれませんがそんなことはありません。この考え方は全ての企業の事業所の現場の原点になります。
1.サイコロジカル・セーフティー(心理的安全性)
チームメンバーがリスクを取ることを安全だと感じ、お互いに対して弱い部分もさらけ出すことができる。
2.相互信頼
チームメンバーが他のメンバーが仕事を高いクオリティで時間内に仕上げてくれると感じている。
3.構造と明確さ
チームの役割、計画、目標が明確になっている。
4.仕事の意味
チームメンバーは仕事が自分にとって意味があると感じている。
5.インパクト
チームメンバーは自分の仕事について、意義があり良い変化を生むものだと思っている。
チームの効果性に影響を及ぼすその他の因子
相互信頼
相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げますこれに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁します。チーム内での信頼関係が作業の質、安全、早さに関係します。信頼関係が築かれていないと作業間のつながりがなく、仕事が遅く、不安全行動にも見ないふり等危険にもなります。
構造と明確さ
効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス(仕事の流れ)、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。目標は、個人レベルで設定することもグループレベルで設定することもできますが、具体的で取り組みがいがあり、なおかつ達成可能な内容でなければなりません。
作業の流れを理解していないと、次への準備が出来ずぎこちなくなり、安全面にも不安材料となります。
仕事の意味
チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。
やらされて行う仕事ではなく、自分で行う仕事の内容を理解し自分の役割を自分で把握していることが重要になります。
インパクト
自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。
このインパクトがとっても重要になります。自分の行っている仕事が役に立っていることが分かること、その仕事に自分が必要とされている。そのように感じられることが大切です。