ヒューマンエラーと後知恵バイアスについて、2つ目の記事です。
1はこちらです。
事故後の調査員の知識は、事故の当事者の知識を上回ることになります。
後知恵ではこのようなことが可能です。
- すでに明らかになった結果に至った一連の出来事を、外部の立場から振り返ることができる。
- その当時の人々を取り巻いた状況(当事者が認識していた状況と、当事者以外が認識していた状況)に限りなく近づくことができる。
- 人々が気づかなかった、見過ごした事実、実行しなかったが実行すべきであった事柄を、ピンポイントで特定することができる。
後知恵はこのように、事故当時者の持っていた知識より多くの知識を得ることができ、そのため『今になってみれば』重要だと考えられる項目へと調査の視点を過度に集中させてしまい、客観的な思考が出来なくなります。
一連の出来事の結果を知っている影響は絶大です。客観的に出来事を振り返ることに対して多大な影響を及ぼし、結果を知った調査員は客観的に過去の行動を振り返ることが出来なくなります。
当事者は下の絵のようなトンネルを進んだ先に事故という現象に遭遇するのです。トンネルを進む時間軸の中ではトンネルの中の景色を見ています。
調査では、出口の出来事の結果、トンネルの外の景色を見ることが可能になり、そのような知識(後知恵)から事故の調査結果を導き出そうとします。
ヒューマンエラーの発生原因、事故原因を知るためには、このトンネルの中の様子を知ることが重要になります。当事者が見たであろう景色はどのようなものであったかを知るために後知恵は使うものなのです。後知恵に引っ張られるのではなく、後知恵を使って知ることが大切です。そのためにも、後知恵バイアスを知りそのバイアスの影響を受けないように考えることが求められます。
人は悪い結果から原因を仮定してしまいがちです。外から眺めるのではなく、トンネルの中をいかにして見るか、トンネルの中を探求しなければなりません。トンネルの出口の事故・災害はトンネルの中での出来事が重要です。時系列的に何がどのように起こったのかを見なければなりません。