保護具着用管理責任者について 5(災害事例)

労働災害防止に関する知識(建設業における災害事例)

接着剤や防水塗料

有害性に起因する事故事例(3)接着剤・防水塗料

接着剤や防水塗料は、二液を混合したり、一液が酸素や空気中の水分と反応することで、接着したり、塗装が固まるような反応が起こるような成分が含まれています。これは、製品に含まれている成分の反応性が高いことを意味しており、刺激性が強く、かつ、感作性、すなわち身体の防御反応が繰り返されるアレルギー反応を起こしやすい物質を含んでいます。
原因物質には共通の性質を持つ物質であり、接着剤や塗料の容器に貼られたラベルの絵表示には「感嘆符」が示されており、ラベルや安全データシートに記載される成分には○○アミンや△△イソシアネート、エポキシ樹脂、などが含まれています。これらには独特の臭気があるが、空気中に気化したものを吸入して呼吸器に影響が出て、ぜんそくになる場合があります。接触すると皮膚がかぶれることがあります。アミン類は皮膚から体内に吸収されて、発がん性を示すため、軍手の使用は禁止で、手袋は毎日交換すべきです。怖いのは、その次に同じ系統の化学物質を使用したときに症状が悪化するアナフィラキシーショックを起こすことで、命に関わる状態に陥ることがあります。
 

【対策】
  • 使用する前に、ラベルとSDS をきちんと確認します。
  • 使用時には、有機溶剤用防毒マスク、ゴーグル型保護メガネ、塗料がしみこまない手袋を着用し、半日程度で新しいものに交換します。
  • 手袋を外すときに付着した塗料を素手で触らないよう、内側に薄い手袋を着用し、手袋を外すときは手袋の外側が内側になるようにします。
  • 作業後のうがい手洗いは十分に行ってください。
  • 具合が悪い場合、かぶれた場合は、すぐに病院に行ってください。

   

有害性に起因する事故事例(4)剥離剤

橋梁や高速道路の高架橋について再塗装が行われています。塗装の前に古い塗装を剥離して、それから再塗装を実施します。当初の剥離剤には有機溶剤系のものが使用されていたが、作業場で使用されていた照明の熱で発火して火災が起きました。次に、ブラスト工法で物理的に剥離する作業が実施されましたが、高濃度の鉛を含有する粉じんを吸い込んで鉛中毒になる事例が発生しました。
その後、引火性も有害性も低いベンジルアルコールに溶剤を変更した剥離剤が使用されましたが、密封空間で高温となる夏期に作業したことにより、空気中のベンジルアルコール濃度が高くなったことによる中毒症状と熱中症様の状態となる中毒事案が2019年から発生しています。
いずれの場合にも、剥離した有害物質や剥離剤に含まれる有機溶剤を一般環境に放出しないために、作業場が密閉空間になっており、作業環境中の濃度が著しく高濃度になるため、事故が起きやすくなっています。
 

【対策】
  • 密閉空間での作業で有害物質濃度が高濃度となるため、細心の注意を払うことが必要です。
  • 剥離剤を使用する場合:呼吸用保護具は送気式のものを選択します。剥離剤のミストが飛散する場合は、呼吸PAPR 型防じん機能付き有機溶剤用防毒マスクを使用することもできますが、吸収缶を短時間で交換します。保護衣は溶剤が浸透するものでは、皮膚に付着して損傷を受け、皮膚からの有機溶剤の吸収を速めるので、耐溶剤性のものが望ましいです。暑熱対策が一層必要です。
  • ブラスト工法の場合:塗膜剥離時に発生する粉じんは、防水塗料の鉛を含んでいるため、鉛則に従って、呼吸用保護具は区分2,3のものを使用し、面体の内側(顔に接する側)が汚染しないように作業後に清掃します。休憩時に、洗顔・手洗いをして喫煙時や水分補給時に経口的の曝露を防ぎます。
  • 一般的な床や壁に使用される剥離剤は、有害性の高いジクロロメタンやジエタノールアミンなどが含まれています。有機溶剤用防毒マスクは。ジクロロメタンでは漏れやすいので、短時間で吸収缶を交換します。ジエタノールアミンについては、防毒マスクで吸入を防ぐとともに、皮膚や眼の損傷を防ぐためにゴーグル型保護メガネを着用します。

 
狭隘空間での作業が多く高濃度曝露になりやすいため、橋梁作業のリスクアセスメントに関する文書に従って、個人用保護具の選択、メンテナンス、作業条件(短時間、保護具の着用状況の確認)の設定に十分な注意を払うことが必要です。