作業場所により、使える保護具は変わってきます。呼吸器用保護具を選定するときに大事な判断要素は、作業する場所に空気があるかないかということです。
一般的な呼吸器用保護具は、酸素のある場所で使うことを前提に設計されています。酸素がない、あるいは濃度の低い場所では、呼吸器用保護具の選定を間違えると、酸欠事故を起こしてしまいます。通常の防毒マスクは、自ら酸素を供給することはできません。吸い込んだ空気に含まれる毒性ガスを単純に取り除く、つまり、空気をろ過する機能しかありません。
このため、酸素の少ない場所で作業を続けていると、酸素不足になってしまうのです。単純にガスを取り除くだけのろ過式の防毒マスクは、酸素濃度が18% 未満のところでは使えません。
呼吸器用保護具の選定
呼吸器用保護具の選定には、大きく2つのポイントがあります。
■作業場所での酸素の有無
酸素のある環境とない環境では、使用する保護具が全く異なります。酸素がある環境では、一般的に使用されているろ過式のマスクを選定します。酸素がないか少ない作業場所の場合は、必ず「給気式」と呼ばれる、外部から空気を供給してくれる方式のものを選定します。選定を誤ると、酸欠という死亡事故にもつながるので、細心の注意が必要です。
■作業場所で発生する有毒ガスや粉じんの濃度
防毒マスクは、万能ではありません。高濃度のガスでは、十分にろ過することはできません。防じんマスクも同じです。粉じん濃度が高ければ、短時間でろ過能力が失われてしまいます。防毒・防じんマスクは、必ず有毒ガスや粉じんの濃度に対応したものを選定してください。
防毒マスクや防じんマスクなど、呼吸器用保護具の選定に当たっては、何よりも作業場所の状況を詳しく調べる必要があります。酸素があるかないかは、重要なポイントです。有毒ガスであれば、ガスの種類と濃度です。粉じんであれば、粉じんの種類や濃度を事前に調べてください。
作業場所を、常に安全な環境にしておくことも大切です。作業する場所のガス濃度や粉じん濃度を、できるだけ下げるようにしましょう。送風機などで、危険なガスや粉じんを排除することが可能であれば、ぜひやってみてください。有毒ガス濃度や粉じん量が少なくなれば、保護具をより安全な環境で使うことができるようになり、使用できる時間も長くなります。呼吸器用保護具の使用に当たっては、安全な作業環境を作ることも、重要なポイントと考えておいてください。