防毒マスクの選定
防毒マスクを選定する上で大切な三つのキーワードがあります。一つ目は、使用環境での酸素濃度、二つ目はガスの種類、そして三つ目がガスの濃度です。
1.酸素濃度
ろ過式と呼ばれる防毒マスクは、酸素濃度が18% 以上あるところでしか使用できません。空気を直接吸い込む方式であるため、酸素が十分になければ酸欠になってしまいます。必ず酸素ガス検知器を使って、酸素濃度を事前に測定します。タンクのような装置の中では、入口近くに酸素があっても、奥の方では酸素濃度が低いことがあります。このため、タンクの内部まで確実に測定できる酸素ガス検知器を使う必要があります。
2.ガスの種類
現場で発生する可能性のあるガスに適合した吸収缶を選定します。必要なガスに対合する吸収缶の型式をメーカーのカタログから調べます。
3.ガス濃度
防毒マスクは、対応するガスの濃度により3種類に分かれます。ガス濃度が低く0.1%以下ならば直結式小型を選定します。1%以下ならば直結式を、2%以下ならば大型吸収缶を備える隔離式を選定することになります。毎日吸ったとしても、健康上に被害・支障のないガス濃度を『暴露限界値』といいます。この暴露限界値とガス濃度の両方を考慮して、いずれかの方式を選びます。
4.注意事項
使用に当たっては、二つのキーワードに注意しましょう。ガスの漏れ込みと、破過時間(吸収缶が効果を失う時間)です。
■ガスの漏れ込み
ガスの漏れ込みとは、面体の締め付けが緩い、または傷があるといった場合に、面体の隙間から有毒なガスが漏れることをいいます。[ 防毒マスクの吸収缶の破過と破過曲線 ]で解説した破過時間も重要な注意事項です。
■破過時間
破過とは、透過する有毒ガス濃度が吸収缶の最高許容透過濃度を超えた状態をいいます。作業環境では、時間とともにガス濃度が変化することがあります。最初のうちは低かったガス濃度が、作業中に上昇してくることもあり得ます。破過時間は、最悪の条件を想定して推算します。つまり、条件の悪いときの有効時間がどのくらいかを算出し、その上で時間に余裕を持ちましょう。急に発生した作業は、予定通りの時間で終わるとは限りません。予備の吸収缶を用意することも大切です。