作業手順書とは
作業手順書とは、言葉の通り、作業を手順通り言葉に表したものになります。作業標準書といわれたりもします。その他、マニュアル、説明書などもあり、「違いってなに?」と感じた人もおられるのではないでしょうか。以下、簡単に説明します。
作業手順書とマニュアルの定義
マニュアル
マニュアル(英:Manual)ないし手引書(てびきしょ)とは、ある条件に対応する方法を知らない者(初心者)に対して示し、教えるために標準化・体系化して作られた文書です。
人間の行動や方法論を解説したものとしては、社会や組織といった集団における規則(ルールなど)を文章などで示したもので、一般に箇条書きなどの形でまとめられ、状況に応じてどのようにすべきかを示しています。
作業手順書
作業手順書 (さぎょうてじゅんしょ)は、マニュアルの一種です。マニュアルは全体を俯瞰したプロセスや注意点がまとめられ作られているのに対し、手順書ではさまざまな業務において細かい作業の確認が目的で作られています。操作マニュアルでは、操作全般について書かれ、操作手順書ではAバルブの操作方法として、その部分が詳細に書かれています。
- 手順書は、作業者に作業行動の順序をわかりやすく示すと共に各作業のやり方と急所を表すものでなくてはならない。
- 手順書は実際の作業が無理なく、早く、正確かつ安全に実施可能とすることを目的としている。また、作業手順は理想作業環境下での作業行動ではなく、実際の作業現場、実際の作業に則して作成されなければその効果は十分に期待できない。
- 手順書どおりに行うことで事故が起こらないか、確率は非常に低くなる。手順書どおりに行わないために事故が発生することがある。
- 理想的には手順書は整理・整頓された環境下での定常の場合の手順となるため、整理整頓されてない等の非定常の場合の対処を盛り込む必要がある。
- 一般に事業所内での作業手順書の作成は、作業を十分に習得した作業者が行い、複数のチェックを受けたのち、承認され、利用、管理されている。そして、形骸化しないよう事業所の安全衛生の推進の仕組みの中で改定がされており、より精査されたものとして維持されるよう努力されている。
(能力開発研究センターPDFより)
作業手順書における「単位作業」とは
マニュアルとは何が違うのかというと、マニュアルは業務全体に渡っての注意事項や作業の流れなどの情報をまとめたものであり、一方手順書は業務の中に含まれる1つの単位作業の手順を記載したものであるということは1.でご説明しました。
では「単位作業」とはどの範囲を指すのか。「夕食をとる」ことを一つの業務として例えてみましょう。
「夕食をとる」という業務を達成するには何をすればいいか、考えてみると「夕食のメニューを考える」「買出しをする」「料理を作る」「配膳する」「食べる」「片づけをする」という工程が挙げられます。この中の「料理をする」という工程はさらに「ご飯を炊く」「食材の下ごしらえをする」「主菜を作る」「副菜を作る」「味噌汁を作る」「盛り付けをする」という作業に分けられます。この「ご飯を炊く」「食材の下ごしらえをする」といった項目が「単位作業」にあたります。
マニュアルの場合は「夕食のメニューを考える」段階から「片づけをする」までの一通りの流れを作業者に伝えるために作られますが、手順書では「ご飯を炊く」「食材の下ごしらえをする」といった単位作業を個別に抽出して作成します。「ご飯を炊く」という単位作業には「お米を計る」「お米を洗う」といった手順があり、道具として「炊飯器」を使用します。そういった一連の手順や使う道具などの情報を確認できるようまとめたものが手順書というわけです。
作業手順書は変えるのか
作業手順書は、基本となる作業についてあらかじめ作成しますが、それぞれの現場に応じて変更することが必要です。作業手順書を作ったから終わりではありません。
マニュアルと手順書の違いを説明しましたが、夕食のメニューが焼き魚からコロッケに代わることで手順書は変わることになります。
毎日、夕食を作る場合、ご飯までは同じでもおかずは変わります。おかずにより作り方も変わるため、おかずの手順はその都度作り直す必要があります。建設現場もところ変われば品変わる、その都度手順書を見直し、その現場に合わせ、追記します。使える部分は残し、使わない部分は横線で削除します。そして追加する部分は赤字で書くことで追加した部分が分かりやすくなります。
作業手順書は細かくし過ぎない
作業手順書は、初心者でも手順書通りに行えば物が作れるようにするために作成します。そのため手取り足取り細かいものを作り、がんじがらめになる場合があります。現場力を重視しその方法として、人間の対応力を伸ばすことに重点を置くのが、最新の安全の考え方です。詳しく知りたい人は、レジリエンスページをご覧下さい。
作業手順書についても、作業員の工夫が可能なようにがんじがらめにしないことが大切であるとしています。大きな事故に人がかかわる場合もあれば、人が防ぐ場合もあるからです。事故発生の割合から考えれば、人が防いでいる割合のほうが大きい、ならば、作業手順書についても細かすぎないことが要求されます。
先ほどのコロッケ定食を下ごしらえするときに、油がないことに気が付いたとします。コロッケは油がないとあげることができません。
作業手順書には、コロッケとありましたが、材料が一つ足りないとそこで終わりになってしまいます。しかし、人はある材料で違う品物を作る能力があります。コロッケの材料からポテトサラダを作り、さらに材料がなければ卵かけご飯で夕食を作ることもできます。
人の能力を上げることが、最大の武器になるのです。これからの建設業は多能工の時代になると考えられます。少ない人材で作業を終わらせ、その代償として給与が上がる、そのようなシステム作りが必要です。